レオノール・フィニ展

2005/07/17

Bunkamura ザ・ミュージアムで、「レオノール・フィニ展」を見ました。

1907年にブエノスアイレスに生まれ、トリエステで育ち、24歳でパリに出てシュルレアリストたちと交流しながら、自らをシュルレアリストと呼ばれることを嫌った画家。小説も書き、舞台衣裳や仮面を製作した多才な女性。そんな彼女の作品群は、確かにシュルレアリスムの枠に閉じ込めることが難しいほど時代ごとに変容を遂げています。最もシュルレアリスムの色彩をストレートに表した作品としては、両性具有を象徴する《守護者スフィンクス》(下左の絵)やダリ的な細密さと光源処理が特徴的な《二つの頭蓋骨》《妖精、ジョイ・ブラウンの肖像》などがあげられますが、1950年代からの『鉱物の時代』における《曖昧な変身》や《特権的地位》などの作品群では、混じり合う赤や金の色彩の中にH.R.ギーガーが描きそうなメタリックな姿形の生命体が奇怪な姿を示し、さらに1960年代の《鉱物の対話》《息づく影》などではそうしたフォルムも暗い青緑の中に溶け込んでいきます。かと思うと、1970年代には具象的で明るい色彩のエロティシズムに彩られた作品が並び、1980年代にはそれも再び暗い闇の中に沈潜していくといった具合で、これが一人の画家の展示会なのか?と驚くほどのメタモルフォーゼを示します。

展示されているのは他に、オペラ「タンホイザー」の舞台衣裳、フィニがデザインし自らも着用したであろう仮面、フィニも出演する怪しい雰囲気のショートムービーやフィニのパリの家の映像(猫屋敷!)など。

自分の好みに合う画風ではなかったけれど、この多才な、自由奔放で影響を受けやすく、したがって一貫性を見いだすことの難しい画家の全体像をあまねく紹介しようと奮闘した主催者の思いのたけが詰まった図録には、好感を持ちました。