海賊(レニングラード国立バレエ)

2005/01/30

レニングラード国立バレエの「海賊」は2年前にも観ていますが、そのときの印象がよかったので、またまたチケットをゲット。レニ国は去年の12月上旬から今年の2月中旬まで日本各地を巡演しており、その間に「くるみ」「白鳥」「ドンキ」「ジゼル」「眠り」そしてこの「海賊」を演るのだそうです。おまけに正月はチャイコフスキーの三大バレエのハイライト、なぜか三重で一度だけ「ロミオとジュリエット」。大変だ……。

この日は、メドーラをスヴェトラーナ・ザハロワが踊ることになっていたのですが、キャスト表にはオリガ・ステパノワの名前が載っていて、以下のapology。

「海賊」にゲスト主演を予定していましたスヴェトラーナ・ザハロワは、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンの命により、急遽1月29日に行われるダボス賢人会議(スイス)特別公演に出演することとなり、やむを得ず本公演出演を断念する事となりました。

さすがロシア!という感じですが、結論から言うとステパノワのメドーラも素晴らしくて不満はありませんでした。プロローグで船が難破し、海岸に打ち上げられたコンラッドたちが倒れ込んでいるところへギュリナーラたち、そしてメドーラがやってくるのですが、この登場の踊りでアティテュードで回ってからシームレスにピルエットに移る部分のスムーズさでまず驚きます。以下も、要所要所でまったく揺るぎのない踊りを見せてくれて、パ・ド・トロワのグラン・フェッテでは音楽が凄いスピードになってしまっているのに負けずに1-1-2回転を途中まで続けて見せてくれました。演技もとてもよくて、特に第2幕の海賊たちのアジトでコンラッドと愛を語らい合う場面の可憐さ(しかし回転しながら可愛らしくコンラッドに駆け寄る場面のステップは複雑)、催眠薬によって寝込んでしまったコンラッドの肩を揺すぶるときの真剣さ、裏切った海賊たちに囲まれる場面の不安と怖れ、それでもビルバントにナイフで抵抗するときの毅然とした姿など、どれも目が離せませんでした。

ルジマトフのアリは、役柄としては主役のコンラッドに影のように付きしたがう従者ですが、その不思議に達観したような風貌と仕種が独特の存在感を感じさせます。見せどころのパ・ド・トロワでは、コーダの前にヴァリエーションの中でグランド・ピルエットから手足を柔らかくたわめてそのまま高速回転。トゥール・ザン・レールから着地のたびに右足を引いて反り返るポーズ。そしてコーダでの激しいグランド・ピルエットと最後のキメのポーズ。年齢的に(特に跳躍系など)厳しいものもありますが、貫禄のダンスと演技はやはり賞賛ものでした。

コンラッドも演技、踊りの両面で存分に見せてくれて、特にパ・ド・トロワでは派手な跳躍を一手に引き受けてくれた感があるし、奴隷市場での奴隷商人アフメットのギュリナーラとのパ・ド・エスクラヴ!ダイナミックなトゥール・ド・レン(背面跳びのような跳躍での回転)やグランド・ピルエットの直後にセイード・パシャが投げたお金の詰まった袋を受け止めてにんまりするのですが、こちらもおひねりを投げたくなるほど。ビルバントたちのブーツでのリズムに乗った勇壮なフォルバン、それにベジャールの「ボレロ」を連想させるパレスチナの踊りも面白く、あいかわらず見どころたっぷりでした。

演奏は、レングラード国立歌劇場管弦楽団。豊かなストリングスや美しいハープの響きもよかったのですが、それらにもまして打楽器群が大活躍で、シンバル、大太鼓、スネア(場面に応じて音質をこまめに替えていました)、ティンパニが素晴らしい存在感で演奏をぐいぐい引っ張っていました。あまりに存在感があるため、4階席の私はついついピットの中に見入ってしまったほど……。

キャスト

メドーラ オリガ・ステパノワ
コンラッド マラト・シュミウノフ
アリ ファルフ・ルジマトフ
ギュリナーラ アナスタシア・ロマチェンコワ
セイード・パシャ アレクセイ・マラーホフ
アフメット アントン・プローム
ビルバント アントン・チェスノコフ
フォルバン ナタリア・オシポワ
クラシック・トリオ イリーナ・コシェレワ / タチアナ・ミリツェワ / エレーナ・フィルソワ
アルジェリアの踊り エレーナ・モストヴァヤ
パレスチナの踊り アリョーナ・ヴィジェニナ
ピチカット マリア・リヒテル / アレクサンドラ・ラツスカヤ
二人の踊り ナタリア・パルフェノア / マリーナ・バルエワ
 
指揮 アンドレイ・アニハーノフ
演奏 レングラード国立歌劇場管弦楽団