廓文章 / 河内山

2004/11/03

「文化の日」企画の締めくくりは、歌舞伎座の幕見席で二幕観劇。

廓文章

まずは「玩辞楼十二曲の内」とある通り鴈治郎丈の家の芸である「廓文章 吉田屋」。紙衣姿で落ちぶれてはいても元は大店の若旦那という役柄を鴈治郎丈が優美に、しかも適度にユーモラスに演じてみせてくれるのが嬉しく、これはもう上方和事の神髄を堪能させていただきました。吉田屋ののれんをくぐるうきうきとした仕種、気もそぞろに置炬燵をづかづかと踏み越えて奥を覗き、煙管をもってきた禿に夕霧の出が近いことを悟ってそわそわする様子、せっかく出てきた夕霧に拗ねて悪態をつくものの、夕霧のクドキにおろおろするなど、考えてみればどうしようもないわがままな若旦那ぶりなのですが、鴈治郎丈の伊左衛門はついつい応援したくなるから不思議。来年は鴈治郎丈が230年振りに上方歌舞伎の大名跡「坂田藤十郎」を襲名する年で、それも南座顔見世からとのことですから、ぜひ京都へ観に行きたいものです。

そして雀右衛門丈の夕霧。奥の襖が左右に開いて、懐紙で顔を隠した夕霧がしずしずと前に進み、はらりと懐紙をのけた途端に「京屋!」の掛け声の嵐。この懐紙を折り重ねながら色事の話をするのは、先代(三代目雀右衛門)の型だそうです。

河内山

言わずと知れた河竹黙阿弥。悪党でありながら強きをくじく、お数寄屋坊主の河内山宗俊を仁左衛門丈が初役で演じます。上野寛永寺の門跡の使僧と称してありがたげな緋の衣に身を包み、じわじわと松江侯を追いつめて浪路解放に成功。このあたりとても息の合った応酬で、さんざんにやられて最後にがくっと肩を落とす梅玉丈の松江出雲守が何とも気の毒ながら、家名だけは守らねばならない殿様としての分別も見せます。相なるべくは山吹のお茶を一服所望でせしめた金子を確認しようとまずはあたりを伺う仕種が、あの仁左衛門丈がやると妙におかしく、三方の袱紗を扇子で持ち上げかけたところで突然時計が鳴り、はっと居ずまいを正して南無阿弥陀仏。舞台が回ってもちろん最大の見どころは、松江邸玄関先の場での啖呵。北村大膳に正体を見破られて大膳はそれを知っていたのかからがらっと砕け、悪に強きは善にもと、世のたとえにも言う通りで七五調の小気味いい台詞が続きます。さぁ、さぁと大膳に反撃しておい、江戸っ子は気が短けえんだ。早くしてくれとやってるところへ家老が割って入ると、突然厳かな使僧の口調に戻ってしからばこのまま帰っても苦しゅうござらぬかとやって大ウケ。花道からの甲高いばーかめぇー!は、本当はもう少し太く通りのいい声でやって欲しい気がしますが、これは仁左衛門丈の声質だから仕方ないかな。

配役

廓文章 藤屋伊左衛門 中村鴈治郎
吉田屋喜左衛門 片岡我當
阿波の大尽 松本幸右衛門
女房おきさ 片岡秀太郎
扇屋夕霧 中村雀右衛門
 
河内山 河内山宗俊 片岡仁左衛門
高木小左衛門 市川左團次
宮崎数馬 中村信二郎
腰元浪路 中村孝太郎
北村大膳 片岡芦燕
和泉屋清兵衛 市川段四郎
後家おまき 中村東蔵
松江出雲守 中村梅玉

あらすじ

廓文章

年の瀬が迫り、慌ただしい大坂の遊郭吉田屋の店先に、みすぼらしい紙衣姿の男が、主人の喜左衛門を訪ねてやって来る。男の正体は藤屋伊左衛門。大店の若旦那だが、扇屋の遊女夕霧のもとに通いつめて身上をつぶし、親から勘当されている身。喜左衛門の厚意で招き入れられ、やっと夕霧に再会できた伊左衛門に、勘当が晴れたとの知らせが届く。

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