暫 / 髪結新三 / かっぽれ

2003/05/11

今月は團菊祭。しかも歌舞伎四百年と團菊没後百年が重なっての歌舞伎十八番「暫」は見逃せないと、3階席Aを予約しました。

ご存知、荒事の代表的な演目。超人的な力を発揮する鎌倉権五郎は紅隈、車鬢に力紙、成田屋の紋を染め抜いた柿色の巨大な素袍で、花道を歩む姿はまるで怪獣のような異形の迫力があります。花道からの團十郎丈のツラネは見せ場で、「市川の十二代目」と名乗りを上げるところでやんやの拍手喝采。三津五郎丈の照葉がこわごわ近寄って「成田屋の旦那じゃありませんか」と白々しく話し掛けると「誰かと思えば大和屋の三津兄ぃ」と返すのも面白く、花道から舞台へ移動するときには「あーりゃ、こーりゃ」の化粧声がかかり、後見四人がかりで素袍を脱がせるなど何から何まで大仰で、それがまた楽しいものです。引き上げるときに仕丁たちが立ちはだかるのを2m以上もある大太刀をふるって一度に首を落とすのですが、これは仕丁たちが前屈みになって首から赤い布を出して頭を隠し、すかさず後見が人形の首を10個もころころと転がしてみせるというもので、そのおおらかさに場内は大爆笑でした。

なお鎌倉権五郎は、後三年の役の際に八幡太郎義家に従い、金沢柵の戦いでは右目を射抜かれながらも戦場を駆け回って自分を射た相手を討ち果たしたという逸話がある武将(確かにスーパーマン!)で、その4代後の子孫が源平の合戦で活躍する梶原平三景時です。

髪結新三

お熊の相手役となる手代忠七が(色男とはちと言いがたい)田之助丈というのにびっくり。それでも、お熊に泣きつかれて途方に暮れるところから新三に騙されて身投げを決意するまでさすがの描写ですが、膝を傷めていて正座できない様子なのが気の毒でした。それにしても、下座の太鼓がどろどろと雷雨をあらわす永代橋で、それまでの親切ごかしから悪役の本性を見せる新三の「よく聞けよ」からの七五調の傘づくしがかっこよく、最後の「ざまぁみやがれ」で胸がすく悪の美学は黙阿弥物ならでは。そしてここでさんざんにやられて打ちひしがれ、入水をはかる忠七を救うのが團十郎丈の源七ですが、実は今日の團十郎丈は不調だったのか、この場や後の新三内の場でセリフの誤りや柝との間が合わない場面が見られました。

次に場内が沸いたのは、新三が鰹を買う場面。小道具の鰹がよくできていて、えらのあたりに包丁を入れると頭がとれるし、胴に刃を入れれば半身に分かれて片方にはごていねいに骨がついているつくりの細かさ。そしてさしもの悪党・新三が強欲な大家にやりこめられる場面のやりとりがなんともユーモラスで、以前観た勘九郎丈の新三と富十郎丈の家主も非常に面白かったのですが、菊五郎丈と左團次丈の組み合わせもそれ以上で笑わせてくれました。

かっぽれ

最後は理屈ぬきのエンターテインメント。今月襲名披露した四代目河原崎権十郎、六代目片岡市蔵、六代目市川男女蔵(左團次丈の子)、それに初舞台の市川男寅(左團次丈の孫)を祝って場内全員で手締めをした後、日本人大リーガー役の3人が出てきて、新庄(?)が『燃焼系アミノ式』の体操を披露。さらにトロカデロみたいなチアガールが出てきてリーダーのドスのきいた号令のもとに整列、音楽がかかって派手なチアリーディングを見せてくれました。特に、前列に並んだチアガールたちが横一列で右から左へ次々にとんぼを切って見せるのが大迫力で、やんやの拍手。最後は、ダイナミックで楽しいかっぽれ踊りで幕を閉じました。

配役

鎌倉権五郎 市川團十郎
鹿島震斎 河原崎権十郎
那須妹照葉 坂東三津五郎
成田五郎 市川男女蔵
清原武衡 市川左團次
加茂義綱 尾上菊五郎
 
髪結新三 髪結新三 尾上菊五郎
手代忠七 澤村田之助
下剃勝奴 尾上松緑
白子屋お熊 尾上菊之助
後家お常 中村歌江
家主女房おかく 市川右之助
車力善八 坂東秀調
加賀屋藤兵衛 尾上松助
家主長兵衛 市川左團次
弥太五郎源七 市川團十郎

あらすじ

天下を我がものにしようとする清原武衡は、臣下の鯰坊主の震斎や女鯰の照葉、成田五郎らを従えて、自分に逆らう善良な加茂義綱を成敗しようとする。そこへ「暫〜く」の声とともに、加茂家の忠臣鎌倉権五郎が駆けつけ、超人的な力で、敵を一網打尽にしてしまう。

髪結新三 → [こちら