ミレー3大名画展

2003/04/26

Bunkamura ザ・ミュージアムで、「ミレー3大名画展」を観てきました。

19世紀中頃(パリでは二月革命があった頃)から、絵画の世界でもアカデミズムに彩られた歴史画や宗教画は重要性を失い、より広範なアピール力をもつ風俗画や風景画が展覧会の主役を担うようになりました。自然主義、あるいは写実主義の画家たちは、「庶民を気高く」そして「歴史画の大画面に風俗画を」描く作業に取り組み、それが大きな成果をあげるようになったのが19世紀後半の数十年のことです。そしてその運動の中心的な画家がジャン=フランソワ・ミレーであり、この展覧会は、オルセー美術館との共同企画で、同美術館所蔵のミレーの《落穂拾い》《晩鐘》《羊飼いの少女》ほかの作品群を中心に、19世紀ヨーロッパの自然主義絵画の流れを、後に続く印象派への影響も示しながら展示したものです。

ミレーの作品群、とりわけ上記の3作品は、広がりのある背景と前景の人物の構図や光の処理が素晴らしく、見ごたえがありました。《落穂拾い》(1857年)は、サロンに発表されると農村の悲惨さを告発する作品であるとして激しい非難を浴びたそうですが、当のミレーは農村のありふれたひとこまを描いたに過ぎなかったのだそうです。《晩鐘》(1857-59年)は、遠景を明るく、前中景を暗くするルプソワールの技法が効果的。遠くの教会の尖塔が示す都市生活と手前の農民の素朴な祈りとが対比されているようでもあります。そして《羊飼いの少女》(1864年)は、緩やかに弧を描く地平線と両脇から包み込むような畝による遠近感が印象的。ミレーが経済的な苦しさから脱するきっかけとなった作品でもあります。

また、ブルトンの写実的(ほとんど写真に近い)な農村画《落穂拾いの召集》《アルトワ地方の小麦の祝別祭》や、同じくバスティアン=ルパージュの《10月,じゃがいもの収穫》にも驚嘆しましたが、さらにピサロ、ゴーギャン、ゴッホなど後に続く世代への影響までも見通していて、近代絵画の系譜の中での自然主義の広がりと影響力を一望できる充実した展覧会でした。

なお《晩鐘》は、保存状態の問題から今後フランスの外への貸し出しが困難になることが予想されているそうです。そういう意味でも、今回の展示は貴重な機会でした。