眠れる森の美女(ボリショイ・バレエ団)

2002/09/27

ボリショイ・バレエ団の「眠れる森の美女」を、東京文化会館で観ました。開演18時30分、終演21時20分。ボリショイ劇場管弦楽団(指揮:パーヴェル・ソロキン)。

「眠れる森の美女」を観るのは、これがたぶん3回目。最初はずいぶん昔に森下洋子さん、2回目があのシルヴィ・ギエムで、今回はニーナ・アナニアシヴィリです。最初に観たときに、終幕のオーロラ姫のポアントでの長時間静止から一瞬空中へ肢体を伸び上がらせる無重力のパに驚かされた記憶は今でも鮮明ですが、今回は名花アナニアシヴィリが踊るのもさることながら、オリジナルのプティパの振付に近いグリゴローヴィチの1973年版が採用されていることも見どころのひとつ。シルヴィ・ギエムのときの演出と比較して気づいた相違点は、

  • プロローグと第1場との間に禁じられた針を使って捕らえられた女達を王妃のとりなしで王が赦す場面がある
  • 第2場の冒頭に農民達の陽気な踊りがある
  • 第2場に王子とカラボスの戦いがない

といったところでしょうか。こうしたことによって、プティパ版のコンセプトであった「皇帝の権威のもとでの世界の調和に対する賛美」が明示されているわけです。

プロローグはオーロラ姫の洗礼式。舞台装置こそ比較的シンプルですが、衣裳がなんとも豪華絢爛。善の妖精たちの踊りは「?」という感じも若干ありましたが、リラの精がびしっと締めてくれました。その後に邪悪な従者たちの引く背の低い車に乗って登場したカラボスは腰の曲がった老婆の姿で登場。幕あいのマイム(針を使った女達の恩赦)の後に第1場に移って冒頭のワルツは弦の響きがとても優美。チャイコフスキーの音楽の素晴らしさを最も実感させる場面で、この日の演奏の白眉だったと思います。そしていよいよ後方の緩やかな石段から主役登場。やはり存在感が違います。アイドル的人気のアナニアシヴィリも来年には40歳のはずですが、この場では豊かな表情としなやかな足さばきで16歳の少女の天真爛漫な魅力を振り巻きます。そしてローズ・アダージョでのアティテュード・アン・プロムナードは爪先から頭のてっぺんまで芯が通っているかのように揺るぎのないもので、最後のポアントでの静止も十分に長く、会場はブラボーの嵐。

第2幕は100年後なので、登場人物の衣裳も時代の違いを反映したものになっている様子です。ここから登場するデジレ王子もグラン・ジュテやトゥール・ザン・レールで大きさ・高さに技巧も見せてくれて、終幕の青い鳥ももちろん素晴らしかったのですが、やはり見せ場は最後のオーロラ姫と王子のグラン・パ・ド・ドゥ。アナニアシヴィリのサポートされてのピルエットの恐るべきスピードや静止時の手足の先から発せられるオーラ、そしてコーダでの再度のアティテュードは、成熟したプリンセスとしてのオーロラ姫と偉大なバレリーナ・アナニアシヴィリの実像が重なった堂々たる踊りで、会場はまたしても大興奮でした。

キャスト

フロレスタン王14世 アンドレイ・スィトニコフ
王妃 マリヤ・ヴォロディナ
オーロラ姫 ニーナ・アナニアシヴィリ
デジレ王子 アンドレイ・ウヴァーロフ
カタラビュット、国王付式典長 アンドレイ・メラニン
シェリ王子 ドミートリー・ルィーフロフ
シャルマン王子 ルスラン・プロニン
フォーチュン王子 ウラジーミル・ネポロージニー
フロール・デ・ポア王子 アレクセイ・ポポフチェンコ
女官たち マリア・ジャルコワ
アンナ・レペツカヤ
エレーナ・ドルガレワ
アンナ・シーロワ
オリガ・ジュールワ
スヴェトラーナ・グニェドワ
イリーナ・セレンコワ
クセーニャ・ツァレワ
公爵夫人 エレーナ・ブカノワ
ガリフロン、家庭教師 ヴェチェスラフ・ゴルビン
農民の踊り リュボーフィ・フィリポワ
アンドレイ・エフドキモフ
悪の妖精カラボス アレクセイ・ロパレーヴィチ
リラの精 マリーヤ・アラシュ
優しさの精 オクサナ・ツヴェトニツカヤ
無邪気の精 オリガ・スヴォーロワ
元気の精 ナターリヤ・マランディナ
寛大の精 ニーナ・カプツォーワ
勇気の精 エレーナ・アンドリエンコ
ダイヤモンドの精 エレーナ・アンドリエンコ
サファイヤの精 エカテリーナ・シプリナ
金の精 ナターリヤ・マランディナ
銀の精 マリーヤ・ジャルコワ
フロリナ王女 マリアンナ・ルィシュキナ
青い鳥 ドミートリー・ベロゴロフツェフ
白い猫 アナスタシヤ・ヤゼンコ
長靴をはいた猫 アレクサンドル・ペトゥホフ
赤ずきん オリガ・ジュールワ
オオカミ ゲオルギー・ゲラスキン
シンデレラ オリガ・スヴォーロワ
王子 アレクサンドル・ヴォルチコフ
 
指揮 パーヴェル・ソロキン
演奏 ボリショイ劇場管弦楽団