マグリット展

2002/07/07

Bunkamura ザ・ミュージアムで「マグリット展」を見ました。

ベルギー生まれのシュールレアリスト、ルネ・マグリットは、見る者の五感に衝撃と不安を与える数々の作品で有名で、そこに描かれる非現実のイメージは極めてユニークなものです。特徴的なモチーフはいくつかあり、それは大空を切り取るような鳥のシルエット、硬質な球体、宙に浮く巨岩などであったりしますが、それらが様々に姿を変えてカンバスに描かれる様が、90点余りの作品を並べたこの展覧会でも存分に見てとれます。

ただ、自分の趣味からすると同時代に影響を与えあったであろうダリの光や透明な物体の描写に見られる写真と見まがうばかりの写実的なエッジの立った技法がむしろ好みで、マグリットの表現はよりナイーブでナチュラルなものに見えます。そういった意味で例外的な、そしてそれゆえに私が気に入ったのは、異形の家族(?)が部屋の壁の向こうに広がる夜の嵐の海を眺める《嵐のおめかし》(1927年)と、石と化して永遠に時が止まってしまった室内を描く《旅の思い出 III》(1951年)、そして夜と昼とが混在する無気味な屋敷を描く《光の帝国》(1961年)でした。

《帰還》(1940年)。空を切りとる鳥のシルエット(しかしそこには影ではなく青空)は、マグリットの作品に頻繁に登場するモチーフ。
《世界大戦》(1964年)。不条理、という言葉が最も似合う異様なイメージの作品。同じタイトルで山高帽の男性の顔がリンゴで隠されている作品も有名。
《白紙委任状》(1965年)。エッシャーのだまし絵を連想させるこの作品も最も有名なもののひとつ。空間の前後の序列は乱れ、あたかも多元的な時間が同時にそこに現れているように感じられます。
《美しい虜》(1967年)。カーテンの向こうまでも含む背後の風景がイーゼル上のキャンバスに切り取られています。遠近法の教科書からヒントを得たといわれるこの作品のアイデアは、マグリットが好んで描いたもの。砂浜に置かれた硬質の球体も、姿かたちを変えて数多くの彼の作品に登場します。
図録の表紙は《光の帝国(部分)》(1961年)。屋敷の手前には夜の闇に煌々と輝く街灯、しかしその背後の空は昼という不思議な作品。図録の解説は、この作品とルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』の一節を結びつけて説明しています。