カルメン組曲 / シェヘラザード / 他(インペリアル・ロシア・バレエ)

2001/10/21

永遠のバレリーナ、マイヤ・プリセツカヤが名誉総裁をつとめるインペリアル・ロシア・バレエ団にファルフ・ルジマトフらが客演しての公演を、新宿文化センターで観ました。

「カルメン組曲」 カルメン:草刈民代
ドン・ホセ:イルギス・ガリムーリン
(休憩)
「牧神の午後」 ニンフ:マイヤ・プリセツカヤ
牧神:アレクセイ・ラトマンスキー
「愛の記憶〜タンゴ〜」 ゲジミナス・タランダほか
「海賊」グラン・パ・ド・ドゥ メドゥーラ:イリーナ・スルネワ
アリ:イリヤ・クズネツォフ
「ガウチョ」 ゲジミナス・タランダほか
「イタリアン・カプリチオ」 マイヤ・プリセツカヤほか
(休憩)
「シェヘラザード」 ゾベイダ:ユリア・マハリナ
奴隷:ファルフ・ルジマトフ

カルメン組曲

ビゼーのオペラをもとにプリセツカヤの夫ロディオン・シチェドリンが音楽を担当し、キューバのアルベルト・アロンソが振り付けて1967年に初演された全4場の作品。今回はカルメンを草刈民代が踊り、コケティッシュでいて芯の通った主人公像を巧みに表現していましたし、ドン・ホセ役のイルギス・ガリムーリンもスケールの大きなダンスで喝采を浴びていました。

牧神の午後 / 愛の記憶 / 海賊 / ガウチョ / イタリアン・カプリチオ

休憩をはさんで第2部の最初「牧神の午後」でいよいよプリセツカヤ登場。1925年生まれだから今年で76歳ですが、すっきりした肢体と優雅な身のこなしからは、とてもそうは見えません。そして、「バレエとは見る音楽」という言葉を聞いたことがありますが、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」を使ったこのバレエはまさにその言葉通り、たゆたうようなこの曲の美しさを際立たせた作品でした。ただ、牧神が岩の上に敷いたニンフのスカーフの上で最後に見せた動作には(この作品を見たのは初めてだったので)ちょっとびっくり。「愛の記憶」はタンゴを使った群舞ですが、正直ロシア人には最も似合わない踊りだと感じてしまいました。しかし、続く「海賊」のグラン・パ・ド・ドゥはパワー全開。イリヤ・クズネツォフの蹴上げた足が後頭部につきそうになるくらいの振りの大きなジャンプも、イリーナ・スルネワの軸足の安定したグラン・フェッテもダイナミックで、大きな拍手を集めました。また「ガウチョ」は3人の男性ダンサーのうち二人が乗馬用のブーツで複雑なステップを踏むコミカルかつ勇壮な作品で、最後には音楽に合わせて手拍子が叩かれるくらいに盛り上がりました。そして「イタリアン・カプリチオ」はインペリアル・ロシア・バレエ団の総出演で、ソリストたちやプリセツカヤの華やかな顔見せによるフィナーレ。

シェヘラザード

第3部の「シェヘラザード」はユリア・マハリナとファルフ・ルジマトフで、この組合せでのパ・ド・ドゥは2年前に「世界バレエの美神たち」で見ていますが、全1幕を通して見るのはこれも初めてです。シェヘラザードはアラビアン・ナイトに出てくる王妃の名前で、リムスキー=コルサコフの有名な交響組曲「シェヘラザード」は王妃が語る数多くの物語の中から4つを取り上げて4楽章に仕立てていますが、このバレエで描かれるのはシャリアール王が女性を信じられなくなった原因を語る冒頭のエピソードで、リムスキー=コルサコフの音楽のテーマとは関係がありません。しかし、エキゾチックで美しい旋律にぴったりマッチした振付(ミハイル・フォーキン)には、最初から最後まで舞台に釘付けになってしまいました。その中でも、やはりルジマトフが登場すると舞台の雰囲気ががらっと変わり、オーラのようなものすら感じられます。荒い息遣いが2階席まで聞こえてくるくらいの熱演で、ユリア・マハリナもそれに応えて妖艶な王妃を演じていました。

なお、最後の虐殺シーンはかなりリアルで、円月刀を下げた王の家来たちは奴隷やハーレムの女たちを殺すのに、めった切りにしたり喉をかききったり、倒れている者にさらに突き刺してぐりぐりやったりしていて、けっこう趣味的にアドリブが入っていそうです。カーテンコールのときにも、一番後ろの列に立っている家来役二人がにやにやしながら前に立っているダンサーを手にした刀でつついていましたが、いったいあれは何だったんだろう?