イジー・バルタの世界

2001/03/23,24

中野武蔵野ホールでの21時20分からのレイト・ショーで「イジー・バルタの世界」を観ました。

人形アニメーションは私の好きなジャンルのひとつで、日本が誇る川本喜八郎やイギリスのクエイ兄弟は以前レポートしたことがありますが、今回はトルンカを筆頭にパペットアニメの王国とも言うべきチェコの作家イジー・バルタのビデオ発売に合わせた全作品上映会です。23日までのAプロでは「ディスクジョッキー / 緑の森のバラード / 笛吹き男」、24日からのBプロでは「謎かけと飴玉 / プロジェクト / 手袋の失われた世界 / 最後の盗み / 見捨てられたクラブ / ゴーレム・パイロット版 / セルフポートレート」が上映されました。

この2日間のプログラムの中では、やはり「笛吹き男」が群を抜いていました。「ハーメルンの笛吹き男」を題材にして、物欲に支配された市民の滅びを退廃的な色合いの木彫り人形で表現した53分の長篇で、一部にネズミの実写を巧みに織り込みつつ恐ろしくシュールな異空間をつくり出しています。特に、裏切られた男がたいまつを手に持って報復のために塔に登る場面での炎と光の表現には、なんとも言えず圧倒されました。また、「見捨てられたクラブ」でのマネキンたちの乾いて世紀末的な動きや、見なれた建物や路地が土に変わってうごめき流されていく「ゴーレム・パイロット版」でのクレイ(粘土)アニメの技法の緻密さも素晴らしいものでした。

以下の解説はチラシから引用。

  • 「ディスクジョッキー」(10分 / 1980年):回転するレコード盤。コーヒーカップ、ボタンなど、連続する円形のイラストで、ディスクジョッキーの日常を描く。
  • 「緑の森のバラード」(10分 / 1983年):薪が、春の訪れを祝って踊りだす。そこに冬の化身の鴉(悪魔)がやってくるが、再び、春が勝利する。自然の変化(実写)と薪のコマ撮りを合わせた作品。
  • 「笛吹き男」(53分 / 1985年):「ハーメルンの笛吹き男」とは異なる解釈で、飽食に明け暮れる人間を、金属的な陰影を持つ木彫りの人形とセットで描く。

  • 「謎かけと飴玉」(8分 / 1978年):飴玉をもらうためには謎かけに答えなければならない。レリーフ(半立体)を使ったデビュー作。
  • 「手袋の失われた世界」(17分 / 1982年):スラプスティック・コメディから『未知との遭遇』まで、映画の歴史を手袋たちがパロディとして演じる。

  • 「最後の盗み」(21分 / 1987年):ある屋敷に盗みに入った泥棒が、不思議な人々に親切にされる。実写のフィルムおよそ五万枚に直接彩色し、幻想的な映像を生み出している。

  • 「見捨てられたクラブ」(25分 / 1989年):古いマネキンが置き捨てられた物置に、ある日新しいタイプのマネキン達が運び込まれる。新しいスタイルの人形アニメーション。

  • 「ゴーレム・パイロット版」(7分 / 1996年):1989年から企画をあたためていた長篇「ゴーレム」のパイロット版。土塊が、シェーム(秘密の言葉)で、ゴーレムとして動きだすというユダヤ伝説の新解釈。
  • 「セルフポートレート」(2分 / 1988年):イジー・バルタ、パヴェル・コウツキー、ヤン・シュヴァンクマイエルのセルフポートレートのミニオムニバス。それぞれのアニメーションの技法を使って、自分の「顔」を描く。