源氏物語

2000/05/07

歌舞伎座の5月は恒例の團菊祭。瀬戸内寂聴訳による『源氏物語』を三之助が演じる昼の部を幕見席で観ました。新之助丈の光君、辰之助丈の頭中将、菊之助丈の紫の上に、藤壷が玉三郎丈、桐壺帝が團十郎丈、右大臣が菊五郎丈とくれば期待もふくらみますが、結論からいうと期待通りとはいかない舞台でした。

ストーリーは光君が藤壷女御に想いを打ち明けるところからスタートし、帚木(雨夜の品定め)、夕顔(夕顔との出会いと死)、若紫(若紫との出会いと藤壷懐妊)、紅葉賀(試楽と藤壷出産)、葵(車争い、葵の出産と死)、賢木(桐壺院崩御、藤壷出家)と続いて須磨(都落ちまで)で終わります。この間、空蝉や末摘花の省略はもとより、本来重要な朧月夜のエピソードを弘徽殿にちらっと語らせるだけに圧縮してもまだ3幕28景がめまぐるしく展開するわけで、客も役者も筋書きを追うのに精一杯。しかも演出がいわゆる歌舞伎らしくなく、最近人気の東儀秀樹による雅楽の楽器にシンセサイザーを組み合わせた音楽をバックに使い、頻繁な場面転換はほとんどが暗転で処理されていて役者のキメが無いに等しく、大向うからの掛け声も湿りがち。

長丁場の中で新之助丈はよく頑張ったと思うし(ただし、助六での颯爽とした男っぷりを見ているからの話で、初めて見た人は光君の存在自体に感情移入できないと思います)、藤壷の玉三郎丈、桐壺帝の團十郎丈はもちろん言う事なし。また弘徽殿の田之助丈がよく、右大臣の原作にはない骨太さを菊五郎丈が示して貫禄がありましたが、一方で客席の気配が役者に伝染したのか、何カ所かせりふを噛むシーンも見られました。また試楽で光君と頭中将が青海波を舞う場面、二人の息が合っていなかったのですが、これは藤壷を前にしての演出でしょうか?

ちょっとフラストレーションのたまる芝居に、夜の部も見て気持ちを切り替えようかと思いましたが、出だしが苦手(つまり退屈)の「本朝廿四孝・十種香」なので諦めました。

配役

光君 市川新之助
頭中将 尾上辰之助
紫の上 尾上菊之助
藤壷 坂東玉三郎
六条御息所 中村時蔵
葵の上 中村芝雀
左大臣 市川左團次
弘徽殿 澤村田之助
右大臣 尾上菊五郎
桐壺帝 市川團十郎