日本国宝展

2000/04/08

東京国立博物館(上野)で開催されている「日本国宝展」へ行ってきました。会場は正面の門から入って左奥にある平成館の2階で、順路に沿って絵画、書跡、工芸、考古、彫刻と優品が並んでいます。

絵画のコーナーでは「早来迎」として知られる《阿弥陀二十五菩薩来迎図》や知らない者のない《鳥獣人物戯画巻》、俵屋宗達の《風神雷神図屏風》など。書跡には各種名筆もさることながら空海・最澄や平清盛の直筆。もちろん工芸のコーナーにも素晴らしい逸品が並びますが、こちらのお目当ては考古の分野です。

「縄文のビーナス」と呼ばれるキツネ目の土偶や火焔形土器、武人をかたどった埴輪などに囲まれて、目的の《七支刀》と稲荷山の鉄剣が並んでいました。《七支刀》の方は思ったより大振りの刀身に4世紀の倭国と百済の関係を背景とする銘文が浮き出し、左右の6本の突起が類例のないもの。このところ東アジア古代関係の本を続けて読んでいる関係で目にしておきたいと思っていた実物が見られてハッピーです。そしてそれ以上に目を見開かされたのが稲荷山(埼玉県)の鉄剣(5世紀)で、錆びた刀身の上にワカタケル大王(雄略天皇)と被葬者の関係を記述する金象嵌の銘文が驚くほどくっきりと見えて釘付けになりました(ちなみに、同じワカタケル大王の名前が銀象嵌された熊本県江田船山古墳出土の大刀にも平成館1階の通常展示でお目にかかることができます)。

さらに彫刻のコーナーでは展示品の数は少ないものの、道成寺の巨大な《千手観音及び両脇侍立像》や運慶の最初の作と言われる《大日如来坐像》が見ものでした。ところでこの展示会の参観者の年齢層を見ると意外に若い人たちが多いのに驚く……というか何となくうれしくなりました。有名な法隆寺の《玉虫厨子》を見ていると、近くで厨子を眺めていた若い女性同士でこんな会話が。

「この絵はなに?」
「お腹をすかせている虎のために身を投げて自分からエサになっているところよ」

ちょっとはしょっているけど「捨身飼虎」の説話をよく知っているじゃないかと思わず感心。日本の未来は明るいぞ……と思いきや、稲荷山の鉄剣のところでは、

娘「あ、漢字だ」
母「古墳時代のものね」
娘「へー、古墳時代にもう漢字があったんだ」

うーん、学校で日本史を勉強しなおして来た方がいいね。そんな具合にはしょって観たつもりでしたがそれでも2時間は優にかかってしまい、外に出たときには日が傾きかけていました。

▲「考古」のコーナー。一番時間をかけて観たところ。
▲「彫刻」のコーナー。いずれ劣らぬ造形美に見飽きることがない。
▲折りしも東京は桜が満開。花見の名所である上野公園は人・人・人。花を愛でる人、酒を飲む人、踊る人。