高山辰雄展

2000/03/19

日本橋高島屋で4年振りに「高山辰雄展」を見ました。前回は1981年から1995年までの完成された画風の作品を集めたものであったのに対し、今回はより幅広く戦前の東京美術学校時代から今日までの作品を並べて、画家の画業70年を振り返るという企画です。

高山辰雄の絵を主題で分けると、初期のまだ画風が確立していない時期を除き、いずれも画家ならではの特徴をそなえた5つの系譜があります。牡丹をはじめとする静謐な花鳥画、山間の大きな風景の中に人間の営みの小ささと確かさを描く心象的風景画、不思議な眼差しで見るものの心の奥底を覗き込む女性像、モノトーンで描かれる《聖家族》シリーズ、そして釈迦や空海を大胆なフォルムで描く宗教画です。この展覧会にはそれらの全てが網羅されて展示されていますが、最も心ひかれるのは3番目の不思議な女性像の作品群です。

……というより、実をいうと、見るものを不安にさせるフォルムの歪み、視点のずれや暗い色調を特徴とする高山辰雄の絵は、自分の好みからはかなり遠いところにあります。しかし、かつて《二人》(1981年)に描かれた女性の不可思議な眼差しに心を奪われて以来、好きではないけれど見過ごせない画家として記憶にとどめられてきていたのでした。

《秋の日》(1980年)。全体に赤茶色の画面の中にほの白く浮かび上がる女性の顔と手が印象的ですが、ここでも正面の女性と手前の水の流れとが異なる視点で描かれており、見るものが浮遊したような空間をつくり出しています。
《青衣の少女》(1984年)。文句なしに美しい作品。窓外の暗い景色とひだの多い柔らかな衣服に包まれて、少女は自分の手の中に何を見つめているのでしょうか。
《慈》(1991年)。朦朧とした背景とひだの多い衣服、暗い肌の色、切れ長の一重の目が半眼で画面の中からこちらを見つめる姿は、構図を変え人物を変えて繰り返し描かれたモチーフ。
《聖家族 X》(1993年)。数多い聖家族シリーズの中でももっともわかりやすいもののひとつ。1976年に発表した版画集に井上靖が名付けた「聖家族」という題名を気に入った画家は、1993年に同名での展覧会を開催しています。