寿曽我対面 / 勧進帳 / 弁天娘女男白浪

2000/01/10

新春大歌舞伎は新橋演舞場で、初春吉例の曽我物の代表「寿曽我対面」、十一代目團十郎の三十五年祭と銘打って現團十郎丈が家の芸を披露する「勧進帳」、菊之助丈の弁天小僧が期待の「弁天娘女男白浪」の昼の部3本を観ました。とれた席は二階席の右側前から3番目。正面に花道が端から端まで見える、勧進帳にうってつけのポジションです。

寿曽我対面

辰之助丈の曽我五郎、菊之助丈の曽我十郎に新之助丈の朝比奈がからみ、富十郎丈の工藤が締める構成ですが、辰之助丈の曽我五郎はちょっと単調で、客席もいまひとつ感情移入できない感じ。

勧進帳

團十郎丈の弁慶、八十助丈の義経、菊五郎丈の冨樫と豪華な布陣。山伏問答の緊迫感、そして富樫が弁慶と向き合った後、後ろを向いてついと顔を上げ、下がる際の覚悟には感動を覚えます。以前幸四郎丈の弁慶に團十郎丈の冨樫という配役で勧進帳を見たことがありますが、こちらもまた素晴らしく、團十郎丈はむしろ冨樫役者ではないかと評されていたのでこのあたりを見極めたかったのですが、「……どちらもいい」が結論です。また今回は、最後の飛び六法がきちんと見られたのもポイントでした。

弁天娘女男白浪

さて、自分のお目当ては最後の「弁天娘女男白浪」、いわゆる「白浪五人男」です。白浪とは中国の故事に由来し盗賊のこと。つまり「5人の盗賊たち」ということになりますが、とりわけ有名な場面はふたつ。ひとつは武家娘に化けた弁天小僧が南郷力丸とともに呉服屋・浜松屋を騙して金をせしめようとするものの邪魔が入って正体を見抜かれ、開き直って正体をあらわし「知らざぁ言って聞かせやしょう」と名乗る場面。もうひとつは捕方に追われた5人が桜が満開の稲瀬川の土手に並んで、「問われて名乗るもおこがましいが」の日本駄右衛門以下次々に名乗りをあげるツラネ。加えて今回は、大屋根上で弁天小僧が立ち回りを見せた後に立腹を切ると、大屋根全体が後ろにのけぞり下から山門がせり上がる「がんどう返し」による舞台転換も見逃せません。

で、菊之助丈の弁天小僧は文句なしの魅力。娘姿のときは楚々として美しく(オペラグラスを覗いていた隣席の女性客が思わず「きれい……」と呟いたほど)、男であることを見破られると一転して伝法な男言葉にかわり、緩急のついたセリフ回しのユーモラスさと切れ味のいい啖呵の爽快さ、それにそうした中にも色気が感じられて引き込まれます。その後もツラネの様式美、大屋根での捕方のアクロバティックなトンボの連続とがんどう返しの大道具のスペクタクル、とストーリーの説明には無頓着にこれでもかと見せ場を繰り出してくる楽しい芝居でした。

配役

寿曽我対面 曽我五郎時致 尾上辰之助
曽我十郎祐成 尾上菊之助
小林朝比奈 市川新之助
工藤左衛門祐経 中村富十郎
 
勧進帳 武蔵坊弁慶 市川團十郎
富樫左衛門 尾上菊五郎
源義経 坂東八十助
 
弁天娘女男白浪 弁天小僧菊之助 尾上菊之助
南郷力丸 市川左團次
忠信利平 尾上辰之助
赤星十三郎 市川新之助
鳶頭清次 尾上菊五郎
青砥左衛門藤綱 市川團十郎
日本駄右衛門 中村富十郎

あらすじ

寿曽我対面

小林朝比奈のはからいで父の仇、工藤祐経と対面した曽我十郎・五郎の兄弟。敵討ちにはやる弟・五郎を兄・十郎は時節を待てと押しとどめる。工藤は二人に杯を与え、五月に催される巻狩の総奉行の役目が終わらないうちは私の恨みによって討たれることはできないと告げるが、年玉がわりにと与えたのは狩場の通行許可証の切手。狩場で二人に討たれてやろうとの工藤の本心を知った兄弟は再会を約束して別れる。

勧進帳 → [こちら

弁天娘女男白浪

浜松屋見世先の場 呉服屋の浜松屋の店先、振袖姿の美しい武家娘とその若党が婚礼の準備にと品定めをしている。娘が緋鹿の子を万引きしたのを見とがめた手代と番頭は娘を呼び止め、緋鹿の子をとりあげてさんざんに打擲するが、それは山形屋で買ったものだったことがわかり一同青くなる。主人の幸兵衛が丁重に詫び、鳶頭清次も仲裁に入るが、結局百両の金を渡して納めてもらうこととなった。
帰ろうとする二人を奥の間にいた侍玉島逸当(実は日本駄右衛門)が呼び止め、二人が騙りでしかも娘が実は男であることを見破ってみせる。問いつめられた娘は正体をあらわして弁天小僧菊之助と名乗り、若党も南郷力丸と素性を明かす。居直る二人に幸兵衛は二十両渡して帰るよう促し、侍に化けた日本駄右衛門は奥でもてなしを受けることを承知する。
稲瀬川勢揃いの場 さまざまな悪事を重ねた日本駄右衛門たちにも追手が迫る。駄右衛門、弁天小僧、忠信利平、赤星十三郎、南郷力丸の五人男は、桜が満開の稲瀬川の土手に勢揃いし、一人ずつ名乗りをあげて捕手に立ち向かう。
極楽寺屋根立腹の場 極楽寺の大屋根の上で、多くの追手に取り囲まれた弁天小僧は立腹を切って果てました。
極楽寺山門の場 山門で駄右衛門は取り囲む追手の提灯を悠然と眺める。手下に化けていた青砥藤綱の家臣が捕らえようとするが簡単に退けられてしまう。
滑川土橋の場 藤綱は、義賊である駄右衛門をこの場では捕らえず、後の再会を約束して別れる。