ブラザーズ・クエイ短編集 Vol.2

1999/10/15

BOX東中野での21時からのレイト・ショーで「ブラザーズ・クエイ短編集 Vol.2」を観ました。

ひたすらシュールな映像世界を創造し続けるクエイ兄弟は、1947年生まれのアメリカ人。カルト的人気を誇り、私もLDを保有している「ストリート・オブ・クロコダイル」(写真:右)で名高い双子のパペット・アニメーション作家で、Peter Gabrielの「Sledgehammer」のMTV制作でも知られますが、その作品世界はむしろ東欧的な幻想怪奇趣味に塗り込められています。今回は彼等のデビュー作「人工の夜景」、ミュージック・クリップとして制作された「スティル・ナハト」シリーズ(2〜4)、「ストリート〜」の次に発表された「失われた解剖模型のリハーサル」、そして実写との合成で眠れる美女の夢世界が重層的に描かれる「櫛-夢博物館」が上映されました。

「人工の夜景」は、孤独な男の路面電車をめぐる妄想を淡々と描く不思議に悲しい作品。「スティル・ナハト」は、ある一室での少女アリスとウサギを描写する「2」と「4」の間にウイーンの森を貫く弾丸と奇怪なテーブルが登場する「3」からなります。特に凄いのが「2」で、ひたすらかかとを上げ下げするアリスの足の動きのリアルさと、ウサギのスムーズでいながら次元感覚を超えた異様な動きが妙に美しく、これが「4」ではアリスにもウサギにも悪魔的な性格が付与されていてぞっとさせられます。ちなみに「2」は幻想ロックバンドHis Name Is Aliveの"Are We Still Married"の、「4」は同じく"Can't Go Wrong Without You"のプロモーション・ビデオとしてそれぞれ制作されたもの。

「失われた解剖模型のリハーサル」は醜い骨と筋だけの人形が毛髪の生えた疣を偏執狂的にいじる姿と、とある部屋の中の二人の人物(男女?)を揺れ動き続ける視点でみつめる映像とで構成されており、見る者の不安と欲求不満をかきたてます。「櫛-夢博物館から」では、寝苦しい夜にベッドに横たわる女性の夢の中で、朽ちた木々の迷宮に埋もれた美術館をパペットが彷徨する緊迫したシーンが果てしなく続きます。

……と、ひと通り筋を追ってはみましたが、ストーリーらしいストーリーはないと言ってよいでしょう。文学 / 音楽 / 絵画にインスパイアされ、そこから抽出されたイメージをモチーフに無限に続く妄想の空間を卓越した技術で描写しているのが彼等の作品です。10月22日まで。