石川五右衛門 / 盲長屋梅加賀鳶 / 艶紅曙接拙

1999/09/15

九月の歌舞伎座は吉右衛門丈の「石川五右衛門」がお目当て。「中村吉右衛門宙乗りにてつづら抜け相勤め申し候」との惹句にひかれつつ、幕見席で夜の部を通して見ることにしました。

石川五右衛門

吉右衛門丈の五右衛門は初役。宙乗り、葛籠抜けのケレンが話題ですが、石川五右衛門と此下藤吉が旧交を温めあう場面のおかしさや最後の南禅寺山門の絢爛豪華なセットも見どころ。貫禄十分の芝居ですが、藤吉が勅使饗応役として現れたときに五右衛門にそれとなく「雲居にまがふ沖つ白波」(法性寺入道前関白太政大臣の歌)と呼び掛けるのは、勅使の正体を知った上での白波=盗賊(cf.「白浪五人男」)の謎掛けでしょう。

加賀鳶 / 紅かん

「加賀鳶」は、松蔵が登場してからの吉右衛門丈と富十郎丈のせりふのやりとりが楽しく、また最後の赤門(東大本郷の敷地は元加賀藩邸)前のだんまりの捕り物もユーモラス。そして「紅かん」は理屈抜きの常磐津舞踊劇。

配役

増補双級巴
石川五右衛門
石川五右衛門 中村吉右衛門
三好長慶 中村東蔵
三好国長 中村歌昇
次左衛門 片岡芦燕
此下藤吉 中村富十郎
 
盲長屋梅加賀鳶 道玄 中村富十郎
お兼 澤村宗十郎
伊勢屋与兵衛 中村又五郎
日蔭町松蔵 中村吉右衛門
 
艶紅曙接拙
紅かん
紅翫 中村梅玉

あらすじ

石川五右衛門

足利義輝への勅使・呉羽中納言から勅書を奪い、身ぐるみはいで自ら勅使になりすました石川五右衛門は、足利邸に乗り込んで勅書を盾に太政官の御正印の提出を求める。管領の三好長慶、弟の国長は猶予を願うが聞き入れない。そこへ大判三千枚を運び込み、饗応役として出てきたのは此下藤吉。実は二人はかつて三河で奉公していた頃の朋輩、打ち解けて互いの身の上を語り合った後で、此下藤吉は五右衛門に与えた黄金で葛籠を買えとのこと。葛籠の中には前日藤吉が取り押さえた五右衛門の育ての親・次左衛門 。五右衛門は葛籠を背負い、妖術を使ってその場から消え、さらに太政官の御正印を盗み出して中空遥か逃げていく。五右衛門が立てこもったのは南禅寺の山門。「絶景かな絶景かな」と都の景色を眺めやるうちに、飛来した白鷹がくわえてきた系図で自分が百済王の流れをひく大内氏の末代、義隆の落胤と知り、さらに野望を膨らませる。このとき此下藤吉は山門の下に到来し、五右衛門と睨みあう。

加賀鳶

姪のおあさが奉公している質屋・伊勢屋に、情婦のお兼を連れてゆすりに乗り込む按摩の道玄。前田家お抱えの加賀鳶・松蔵に企みを暴かれ、さらに別の悪事の証拠をつきつけられてすごすごと引き下がる。高飛びをしようとした二人だが、踏み込んだ捕り方に暗闇の中で相次いで取り押さえられる。

紅かん

江戸は浅草、蝶々売や朝顔売、庄屋の小旦那に団扇売、そして虫売りの面々が顔を揃えて何か面白いことはないかと話しているところへ、紅翫こと紅屋勘兵衛がやってくる。皆にせがまれて紅かんはひとしきりおかしな踊りを披露し、やがて三味線をかたげて廓へと急ぐ。