白鳥の湖(東京バレエ団)

1998/11/11

マラーホフの来日公演の中から「白鳥の湖」を、五反田の簡易保険ホール(ゆうぽうと)で観ました。マラーホフを初めて見たのは昨年の「第8回世界バレエフェスティバル」でしたが、このときはモダンの作品を端正に踊っていたのに対して、今回は古典中の古典。なお、オデット / オディールは当初アルティナイ・アスィルムラートワが予定されていましたが、日程の都合で英国ロイヤルバレエ団のヴィヴィアナ・デュランテに変更されていました。

バレエを観るのは初めて、という友人を案内するにはなんと言っても「白鳥の湖」は好適の演目。ストーリーはわかりやすいし、チャイコフスキーの音楽は華麗でかつ親しみやすく、第2幕の「4羽の白鳥の踊り」や第3幕の「各国の踊り」「黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ」のように見どころもたっぷり。友人もデュランテの優雅なダンスにため息をつき、白鳥たちのチュチュが可愛いと喜び、マラーホフが同年齢(30歳)と知って愕然としていましたが、これを機にバレエにはまってくれそうです。自分自身、かつて見たヌレエフ / ブフォネスに続いて3度目の今回も非常に楽しめましたが、この二人がどちらかといえばダイナミックな舞踏で王子を主役にするタイプなのに対して、マラーホフの王子は控えめな表現で気品と叙情性を前面に出していたようです。特に今回は第2幕の「オデットと王子のアダージョ」が素晴らしく、デュランテが白鳥の哀しみと王子との愛への期待を完璧に表現してみせ、マラーホフがかすんでしまうほど。また、第3幕ではオデットとまったく性格の異なる蠱惑的なオディールを演じて演技力の高さを示しました。

さて、「白鳥の湖」といえば結末が悲劇で終わるものとハッピーエンドになるものと両方の演出があり、かつて舞台で見たヌレエフの演出は王子が悪魔を倒すハッピーエンド、フェルナンド・ブフォネスが出演した版ではオデットと王子は湖に身を投げ水底の世界で結ばれるというもの。さらにレーザーディスクで見たヌレエフ版は王子が悪魔との戦いに破れて湖に沈められオデットは悪魔に連れ去られるという大悲劇(これが本来の姿)ですが、今回の演出は王子が悪魔の翼をもぎとって倒し、オデットを救うというハッピーエンドでした。めでたしめでたし。

物語

第1幕(遠くに王宮の見える庭)
王子ジークフリートの成人を祝って親しい友人や村の若者たちが集まっている。宴の最中に王妃がやってきて、明日の舞踏会で花嫁を選ぶようにと王子に告げる。まだ女性への愛を知らない王子は、明日の夜への期待と不安に胸を締め付けられる。薄暮れゆく空に白鳥の群れを見た王子は、弩を手にその後を追う。
第2幕(月光の冴える静かな湖のほとり)
深い森の中にある湖のほとり。白鳥を射ようとしたジークフリートの前に一人の娘が現れる。その美しさに惹かれた彼は、彼女が悪魔ロットバルトによって白鳥に変えられた王女オデットであり、夜の間だけ人間の姿に戻れること、誰にも愛を語ったことのない若者が永遠の愛を誓ったときに、悪魔の呪いから解放されることを聞き出し、自分こそがそれにふさわしい人間であり、彼女を必ず救い出してみせると言う。オデットは性急な愛の誓いにおののきながらも彼を信じ、二人はまた会うことを約束して別れる。
第3幕(王宮の舞踏会)
次の夜、城の大広間では盛大に祝宴が開かれている。花嫁候補の王女たちと踊る王子の今の気持ちを知らない王妃は、彼がどの王女も気に入らないというのを聞いて失望する。突然ファンファーレが鳴り響き、貴族になりすましたロットバルトが娘のオディールをつれて広間に入場する。ジークフリートはたちまちオディールの誘惑に負け、彼女をオデットと信じて愛を誓い、王妃に結婚相手を選んだと告げる。と、その途端に悪魔の親子は正体を現し、だまされた王子をあざ笑いながら去っていく。広間の外で一部始終を見ていたオデットは絶望しながら湖に戻る。
第4幕(もとの湖のほとり)
オデットを追いかけた王子は自分の過ちを詫び、許しを乞う。そこへ現れた悪魔は白鳥たちを蹴散らし、王子をののしって勝利に酔いしれる。王子は悪魔と戦うが、不思議な力が湧き出てついに悪魔の翼をもぎとり、これを倒す。悪魔は滅び、白鳥達は呪いから解き放され、もとの乙女たちに戻る。永遠の愛を誓いあって、王子ジークフリートとオデット姫は固く抱き合う。