星野道夫の世界

1998/09/19

銀座松屋で、写真家・星野道夫氏の遺作150点余を展示する「星野道夫の世界」展を見ました。

アラスカの自然に魅せられ、極北の景観と生き物たちの姿を写真に撮り続け、美しい紀行文とともに紹介し続けた星野道夫氏が、カムチャッカ半島で取材旅行中にヒグマに襲われてこの世を去ってから2年。北海道在住の山仲間・K氏の勧めもあって彼の最後の作品(未完)となったフォトエッセイ『森と氷河と鯨』を手にしてから彼の作品に関心をもち、機会があれば展覧会に足を運びたいと思っていました。

会場はたいへんな盛況で、落ち着いて作品を鑑賞することは難しかったのですが、大きなパネルに展示された数々の写真やVTRからは、アラスカの大地とそこに住む動物たちの厳しい生への星野氏の敬意と愛情がこちらにもはっきりと伝わってきました。

秋の原野、水を飲みながら憩うムースの親子。遠くにマッキンリー山の壮大な姿。
遡上するサケとそれを狙うグリズリー。サケの目の前には確実な死があります。
群れから離れて雪解けのツンドラをさまよう1頭のカリブー。
不思議な赤味を帯びたオーロラ(ノーザンライツ)。星野道夫が最期の瞬間に思い浮かべたものは、このオーロラであったかも知れません。

星野道夫(ほしのみちお)

プロフィール

1952年 千葉県市川市に生まれる。
1971年 初めてアラスカに渡り、シシュマレフ村でエスキモーの家族と一夏を過ごす。
1976年 慶応義塾大学経済学部卒業。動物写真家田中光常氏の助手を経て、アラスカ大学野生動物管理学部に留学。以後アラスカの自然と動物そして人間を撮り続ける。多くの国内誌をはじめ、「ナショナル・ジオグラフィック」「オーデュポン」などに作品を発表。
1986年 第3回アニマ賞を受賞。
1990年 第15回木村伊兵衛賞を受賞。
1996年 取材先のカムチャッカ半島クリル湖畔でヒグマの事故により急逝。

主な著作

写真集「Alaska極北・生命の地図」(朝日新聞社)、「GRIZZLY」「MOOSE」(以上平凡社)、「Alaska風のような物語」(小学館)、「ARCTIC ODYSSEY」(新潮社)「GOMBE」(メディアファクトリー)、エッセイ集「アラスカ光と風」(福音館書店)、「イニュニック」(新潮社)、「旅をする木」(文芸春秋)、「ノーザンライツ」(新潮社)、フォトエッセイ「森と氷河と鯨」(世界文化社)、写真絵本「アラスカたんけん記」「森へ」(以上福音館書店)、「ナヌークの贈りもの」(小学館)

遺作となった「森と氷河と鯨」の表紙にも使われた作品。クジラの骨の遺跡、ベーリング海に浮かぶ半月。いつかこの景色の中に自分も立ちたいと、痛切に願います。