コートールド・コレクション展

1998/02/08

日本橋高島屋で、ロンドンのコートールド美術館の印象派絵画のコレクションを展示する「コートールド・コレクション展」。

一般的に日本人は印象派が好きですが、御多分に漏れず自分も印象派絵画を真面目に研究した時期があり、パリのオルセー美術館やワシントンDCのフィリップス・コレクションを訪れて名画の前でため息をついたこともあります。今回の展示は印象派を代表する画家たちの、それも極めて有名な作品が少なからず含まれており、半ば義務感に駆られての見学となりました。しかし、画集などで見知った作品が多いだけにあっと驚くような新鮮な出会いは少なく、その意味では逆に面白みに欠けてもいたかもしれません。

▲マネの《フォリー=ベルジェールのバー》。1882年のサロンに入選したマネ最後の大作。ほかに《草上の昼食》も展示されていたが「オルセー美術館にあるはずの絵がなぜここに?それにタッチも妙に粗いが……」と不思議に思っていたところ、やはりオルセーのオリジナルの画家自身によるレプリカだった。
▲ドガの《舞台の2人の踊り子》。身体を洗う裸婦やリハーサル中の踊り子といった主題を繰り返し描いたドガの1874年の作品。下からの光線が作る陰影や中心のずれた構図の微妙な不安定感が踊り子に動きを与えている。
▲ルノアールの《桟敷席》。1874年の第1回印象派展に出展されたこの作品は、技法的にはむしろかなり精巧。この後に制作されるオルセー美術館の《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》やフィリップス・コレクションの《船遊びの昼食》の明るい輝きが自分の好みだが、今回の展示ではこの作品の他には、厳しい輪郭線を強調した「乾いた様式」の時代を飛び越えた晩年に近い作品が展示されていた。
▲セザンヌの《サント=ヴィクトワール山》。モネの《睡蓮》と同様に、セザンヌはエクス=アン=プロヴァンスのこの山を繰り返し描いているが、この作品は1887年頃のもの。セザンヌの筆使いは晩年になるほど色斑が大きくなるので、一目見ただけでおおよその制作年代がわかる。
▲ゴーギャンの《テ・レリオア(夢)》。1897年、タヒチで制作されたもの。同じ年に大作《我々はどこから来たのか、我々は何者なのか、我々はどこへ行くのか》を制作した後、ゴーギャンは自殺を図っている。はっきりした輪郭線で色面を区切るゴーギャンの技法は、一瞬の光をとらえるために絵の具の斑点で色を作った印象主義の技法とは異なるもの。